覚醒と口付けと…
躰に全く力が入らなかった。
敵と対する時にはマヒ毒や石化などの魔法をくらうこともある。
共通点を探すのならば似ているのかもしれない。
だがこれは全くのべつものだった。
強制されて動けないのではない、動かないのである。
死とはこのような感覚なのかもしれない。
肉体が意識を捨て去り、あがく努力すらできなかった。
思うように動かなくなっても、必死にしがみついてきた与えらし躰は、今エネルギーを絶たれ、た
だの肉のかたまりへと変化しつつあった。
意識はあるのに、ふらりと傾ぎ躰をとどめることができない。
泣きそうな顔で自分を見つめる彼女を抱きしめることはもちろん、大丈夫だと告げることさえでき
ない。
堅く閉じた瞼、自分の見ていると感じるこの光景は現実なのだろうか?
一度自覚してしまった矛盾。視界に映っていたものが暗くかすんでいく。
肉体と意識の接点が薄れていく・・・・・恐ろしかった。
「・・・・・・マイ=ロード。」
ふいに暖かい空気に包まれた。眠りとも違う静謐な暗闇でただ漂っていた意識が現実に引き戻され
る。
懐にひそませていた指輪が人知れずかすかな光を宿す。
冷たく固まっていた躰にわずかばかりの血が巡る。
「―――――――――――
―――――――
――――――――― 。」
その言葉を聞き取ることはできなかったが、想いがあふれるその優しい声に包まれると今度は癒し
の眠りへとおちていけそうな気がした。
両の手のひらに凍えた手が包まれる。
握り返すことはまだできそうになかったがわずかに添わすことには成功した。
剣を握る彼女の手は、羽のペンを握ることしかしない貴婦人の手のような柔らかなものではない。
騎士の誇りを胸に抱きながらも、古風で頑なな彼女は自分に対する時も女らしくない己を恥じてか
決してその手袋を外すことをしない。
愛されることに不慣れな彼女は、自分が愛するのは剣を握る誰よりも優しく誇り高い彼女なのだと
信じてくれない。
いや、信じてくれないのではないな・・・・・
彼女の自身に対する不安を知っていながら、否と安心させてやることができない。
貴方の剣であれればいいと、全てを捧げ愛してくれる彼女の覚悟を、偽りの自分が受け止める自信
がないのだ。
自分にこそ彼女を愛する資格がないのに、どうやって愛を告げることができるだろう。
ジュリアン・・・・・・・・・
―――――――――――――――
―――――――。
「うっ・・・。」
カーテンの隙間から届く一条の朝日で目が覚めた。
冷たい陰鬱な気におかされていた眠りではしばし感じなかった気持ちのいい朝だった。
ふと朝日の他にぬくもりを感じて目を向けるとそこには愛しい彼女が眠っていた。
ジュ・・リアン
と思わず口に出しそうになった名前をなんとか胸にしまい込む
かすかに記憶に残る彼女の祈り。
ずっと付いていてくれたのだろう彼女の眠りを妨げたくはなかった。
ふだん張りつめている彼女の無心な寝顔にみとれる。
包まれている手が温かい。
彼女の頬も暖かいのであろうか。
そんなレイスの気配を感じてか、ジュリアンが目を覚ました。
「マイ=ロード!おかげんは・・・・ん。」
いつの間にかベットにもたれて眠ってしまったジュリアンの頬に寄せられたレイスの唇は運命の女
神のいたずらか、ジュリアンの言葉を封じるように唇へ・・
「マイ=ロードッッッッッッ」
その日の皆の目覚ましは、耳までピンク色に染めたジュリアンの悲鳴のような叫びであったとか、
なかったとか。
END
〜著者・美唯紗さんからのコメント〜
・・・・・・・初めて書いたグロラン小説。というか、ゲームで小説が書けるとは驚きました。
それだけこの世界にのめり込み、私の中でキャラが動いてるって事なんでしょうね〜 。
とにもかくにも、主人公&ジュリアン萌えです。
ちなみにうちの主人公はレイス君。クールで根暗な子ですが、懐に入れた人間にはベタ甘です(笑)
はぁ・・・それにしても前半の暗さ。私が書くと暗くなるってのはわかってましたがこの暗さ(爆)
なんとからぶらぶ(?)こじつけてみましたがこの温度差はどうなんでしょう?